ダブルバインドとは、相手に2つの選択肢を提示し、どちらを選んでもこちらにとって有利な結果を引き出すコミュニケーション手法です。
このテクニックは、選択肢の中に本命を巧妙に隠し、相手に「どちらを選んでも悪くない」と思わせることを目指します。
セールスでは、顧客に選択肢を与えながらも、最終的にこちらの意図する行動を促す際に有効です。
ダブルバインドを使いこなすためには?(セールス向け)
ダブルバインドをセールスの場面で効果的に活用するためには、まずその原理を深く理解し、適切な状況で自然に応用できるようになることが重要です。
ここでは、ダブルバインドの基本的な概念と、その実践的なセールスでの応用方法について解説します。
基本的な仕組み
顧客が無意識に選んでしまう、または選ばざるを得ない選択肢を2つ用意します。
例えば、「今日中にお見積りを作成してお渡ししましょうか?それとも今すぐお見積りの内容を確認しますか?」といった形で、どちらを選んでも見積もり内容を確認してもらうことが前提になります。
ダミーの迷いを作り出す
顧客が迷う対象を、意図する選択肢とは別のところに設定し、顧客の意識をそちらに向けさせます。例えば、商品の選定について悩んでいる顧客に対して、「Aプランの支払い方法を月払いにしますか?それとも年払いにしますか?」と支払い方法に焦点を移すことで、商品自体の購入を受け入れやすくします。
本命の迷いを無意識に埋め込む
人は同時に2つのトピックで深く迷うことができません。そのため、意識的に迷わせたダミーに注意が向いている間に、本命の選択肢を無意識のうちに受け入れさせるのです。
実践例と応用
ダブルバインドを用いたセールステクニックは、商談やクロージング、顧客とのコミュニケーションなど様々な場面で活用できます。以下にいくつかの例を紹介します。
商品の提案時
「この商品を今月中に導入されるのと、来月頭に導入されるのでは、どちらが業務効率化に役立つと思いますか?」
解説: ここでは、導入時期を選択肢として提示しており、「導入するかしないか」という迷いを省いています。そのため、顧客は「導入すること」を無意識に前提として考え始めるのです。
クロージングの際
「お見積もりの内容に問題がないようでしたら、このまま契約に進みますか?それとも、他に確認したい点をお伝えしますか?」
解説: ここでは、契約に進むことを一つの選択肢に設定し、顧客が「契約するかどうか」で迷うのではなく、確認事項をどうするかに意識を向けさせています。その結果、契約に進むことを受け入れやすくなります。
フォローアップの場面
相手が「今は考えさせてください」と言った場合の返し: 「わかりました。次回、さらに詳しい情報をお伝えする機会を作りましょうか?それとも、ご自身で確認できる資料をお送りしましょうか?」
解説: この返答では、「考えさせてください」という断り文句に対して、次回の機会を提案することで、再度の接触を前提として話を進めています。結果的に顧客が拒絶感を抱かず、次のアクションに進む可能性が高まります。
ダブルバインドを成功させるコツ
ラポール(信頼関係)を築く
顧客との信頼関係が十分に築けていない状態でダブルバインドを試みると、不自然さが際立ち、逆効果になることがあります。ラポールの質を高めた状態で行うことで、顧客が選択肢を受け入れやすくなります。
肯定的な表現を用いる
否定的な選択肢は避け、「~してもいいですか?」といった肯定的な選択肢を用いることがポイントです。否定的な表現を用いると、顧客に不安感を与えたり、断りやすい雰囲気を作ってしまう可能性があるため注意しましょう。
自然な会話の中で使用する
ダブルバインドはあくまで自然な会話の中で行われるべきです。顧客に違和感を抱かせないように、状況に合わせて巧妙に織り交ぜていくことが求められます。
まとめ
ダブルバインドは、一見複雑に思えるかもしれませんが、信頼関係を大切にしながら選択肢の設定を工夫することで、効果的に活用できます。顧客が無意識に「本命の迷い」を受け入れるように仕向けることで、商談の成功率やクロージングの精度を高められるでしょう。セールスシーンでの応用を通じて、顧客との対話を円滑に進めていきましょう。